ずっとあると思っていた
しかしその瞬間は、突然訪れる・・・
人情色濃い”まち”の魚屋たちの
日常を追ったドキュメンタリー!
12月17日(土)
渋谷イメージフォーラム
にて公開
ほか全国順次
イントロダクション
“まち”のアイデンティティーが
危機に瀕するときを
カメラは見つめた
魚屋の活きのよい掛け声。貝を剥き続ける年老いた女性。年末のお客たちとお店の賑わい。─古くから漁師町だった浦安には魚市場があった。工場汚染水の影響で漁業権を放棄し埋立地となった浦安にとって、魚市場が漁村だった町のシンボルでもある。そんな魚市場には、昼は町の魚屋、夜はロックバンドとして活動する森田釣竿がいた。時代の流れと共に変わっていく魚の流通と消費の形。脈々とつながってきた暮らしを謳歌する浦安の人々。しかし、その瞬間は、緩やかに、そして突然訪れる…。
ある町の、ある市場をめぐる
ありのままの記憶と記録
監督は、映像作家の歌川達人。これまで主にカンボジアで短編中編のドキュメンタリー(『時と場の彫刻』『カンボジアの染織物』)を制作し、本作が初の長編となる。撮影期間中、歌川は浦安魚市場近くへ移り住み、緻密な撮影を重ねた。本プロジェクトでは、映画製作に限らず、写真集作成や魚市場内での映像インスタレーション展示など、多角的なアウトプットを行ってきた。カメラを持った1 人のアーティストとして、滅びゆく場や営みに対し何ができるのかを見つめた軌跡である。
監督から
私はたいてい、場所に興味がある。日常生活で、同じ場所をずっと見つめるような余裕はないけれど、カメラを持っていると、注意深く、特定の場所を見つめることができる。その場に出入りする人々、普段は流れてしまうような、何気ない仕草や会話。それらの断片が編集で結びつくと、自分の想像を超えるような、言葉では言い表し難いものが立ち上がってくることがある。それを作る過程は辛く大変なこともあるけれど、総じて楽しい。
インタビュー中心で構成された映画だと、効率よく情報を受け取ることは出来るし、被写体の佇まいから様々なことは想像できる。けれども、本作はそういう構成になっていない。撮影では被写体のそばに居て、何かが起きることをただ待ち続けた。何気ない仕草や会話で語られることの方が美しいし、好きだから。
グローバリズムとローカリズム、漁業や市場、コミニュティの衰退など、大きな言葉で語ることもできるのかもしれないけれど、ただこういう場所や出来事があったということを、映画という形にまとめたいという、極私的な欲求に付き合ってくださった方々、特に、カメラが側にいることを許してくれた寛大な方々に改めて感謝します。何より撮影は楽しく、合間に沢山食べた海鮮物は最高でした。長い時間をかけて、多くの方々に観て頂けると嬉しいです。
1990年10月6日生まれ、北海道出身。映像作家。主にドキュメンタリーのフィールドで活動する。立命館大学映像学部卒業後、フリーランスとしてNHK番組やCM、映画の現場で働く。初監督ドキュメンタリー『カンボジアの染織物』がカンボジア、スペイン、ブラジルで上映され、ギリシャのBeyond The Borders International Documentary Festival 2018 コンペティション部門審査員特別賞を受賞。中編『東京2018 プノンペン』がFestival/ Tokyo18にて展示上映。短編『時と場の彫刻』がロッテルダム国際映画祭2020、Japan Cuts 2020などで上映。一般社団法人Japanese Film Project 代表理事。
スタッフ
秦岳志 Takeshi Hata
1973年東京都生まれ。大学在学中よりミニシアター「BOX東中野」スタッフとして劇場運営に関わりつつ同事務所でテレビ番組、映画予告編制作を始める。99年よりフリーランスとなり、ドキュメンタリー映画の編集、プロデュースを中心に活動。主な長編映画作品に、佐藤真監督『花子』(01)、『阿賀の記憶』(04)、『エドワード・サイード OUT OF PLACE』(05)、小林茂監督『チョコラ!』(08)、『風の波紋』(15)、真鍋俊永監督『みんなの学校』(14/編集協力)、小森はるか監督『息の跡』(16)、戸田ひかる監督『愛と法』(17)、『My Love 日本篇』(21)、原一男監督『ニッポン国VS泉南石綿村』(17)、『水俣曼荼羅』(20)、島田隆一監督『春を告げる町』(19)、日向史有監督『東京クルド』(21)、國友勇吾監督『帆花』(21)など。
今井真 Makoto Imai
1986年東京都生まれ。大学在学中より短編映画の制作を開始。 フリーランスの演出部、APとして商業映画制作に参加し今泉力哉、井口昇ほか多数の監督に師事。 監督作の「アナタの白子に戻り鰹」(13/ MOOSIC LAB 2013 観客賞)公開以降、企業CM、MV、WEBドラマなど様々な映像を制作。メ〜テレ「深田晃司 海を渡って見えたもの」(16)、「日本HP Project Mars」ドキュメンタリー(18)、 「Urayasu Seafood Elegy」(20/The Food Film Festival TOKYO 審査員特別賞)、「Beginning 横浜キヤノンイーグルス」(21) など。
山本タカアキ Takaaki Yamamoto
1977年静岡県生まれ。日本大学芸術学部映画学科を卒業後、スタジオエンジニアを経てフリー録音技師に。近年の作品に『南瓜とマヨネーズ』(17/冨永昌敬監督)、『生きてるだけで、愛。』(18/関根光才監督)、『アイネクライネナハトムジーク』(19/今泉力哉監督)、『音楽』(20/岩井澤健治監督)、『風の電話』(20/諏訪敦彦監督)、『Arcアーク』(21/石川慶監督)、『ビリーバーズ』(22/城定秀夫監督)、『さかなのこ』(22/沖田修一監督)など。
POSA すぎやまたくや&紫藤佑弥
すぎやまたくや・紫藤佑弥による post classical/blues/electronica/ambient/noise/IDMなどを軸に新しい音を構築する音楽・音響ユニット。映画「左様なら」の劇中音楽を担当。そのほか、GOMESSとの共作EP「間」千葉広樹との共作EP「plain(Music for II!)」を配信リリースした。
植山英美 Emi Ueyama
プロデューサー、海外セールス、アーティクルフィルムズ代表。日本で唯一のドキュメンタリー・海外セールス会社として、3年連続カンヌ映画祭併殺マーケットCANNES DOCSで、世界10社の出展社のひとつとして選ばれている。コ・プロデューサー作品 小谷忠典監督『フリーダ・カーロの遺品 - 石内都、織るように』(15)は、韓国全州国際映画祭、HOT DOCS国際映画祭など数々の国際映画祭にて上映。プロデューサー作品 日向史有監督作品『東京クルド』(21)はシアター・イメージフォーラムでの上映を皮切りに全国で公開したのち、韓国全州国際映画祭国際コンペ部門で特別審査員賞を受賞。その他ドイツ・ニッポンドック賞、オランダ・カメラジャパン大賞を受賞、台湾国際ドキュメンタリー映画祭などで上映された。プロデューサー作品、日向史有監督作品『アイ・アム・ア・コメディアン』(22)は、DMZドキュメンタリー映画祭、東京国際映画祭で上映された。
長倉徳生 Norio Nagakura
有限会社カサマフィルム代表。1996年にドキュメンタリー映画監督、佐藤真氏と共に同社を設立。カサマフィルム製作の『風の波紋』(監督:小林茂・JSC賞)、『息の跡』(監督:小森はるか)をプロデュース。他に、「陸軍登戸研究所」(監督:楠山忠之/第33回藤本賞奨励賞)撮影・編集技術。「ひとりひとりの戦場~最後の零戦パイロット」(監督:楠山忠之/第39回山路ふみ子財団特別賞)撮影・編集技術など。現在、性暴力をテーマにした「魂のきせき」(監督:小林茂)を製作中。
上映劇場
12月17日(土)
渋谷イメージフォーラム
にて公開
ほか全国順次
北海道
- 地域
- 劇場名
- 電話番号
- 公開日
- 北海道札幌市
- シアターキノ
- 011-231-9355
- 7/7(金)夜の1回のみ特別上映
東北
- 地域
- 劇場名
- 電話番号
- 公開日
- 岩手県宮古市
- シネマ・デ・アエル
- 090-8582-4940
- 3/4(土)、3/5(日)【上映終了】
- 新潟県
- シネ・ウインド
- 025-243-5530
- 4/22(土)~4/28(金)【上映終了】
関東
- 地域
- 劇場名
- 電話番号
- 公開日
- 東京都
- シアター・イメージフォーラム
- 03-5766-0144
- 12/17(土)〜1/13(金)【上映終了】
- 東京都
- シネマ・チュプキ・タバタ
- 03-6240-8480
-
2/16(木)〜28(火)【上映終了】
字幕・音声ガイド付き上映
- 東京都
- 下高井戸シネマ
- 03-3328-1008
- 4/22(土)~4/28(金) 11:45〜【上映終了】
- 神奈川県
- 横浜シネマリン
- 045-341-3180
- 2/25(土)〜3/10(金)【上映終了】
- 千葉県
- シネマイクスピアリ
- 047-305-3855
-
1/20(金)〜2/22(水)【上映終了】
好評につき、上映期間が4週間延長3/29(金)〜4/4(木)1年ぶりの嬉しい再上映!
- 埼玉県
- 深谷シネマ
- 048-551-4592
- 4/30(日)~5/6(土)*火曜休館【上映終了】
- 長野県
- 上田映劇
- 0268-22-0269
- 1/21(土)〜 2/3(金)【上映終了】
近畿
- 地域
- 劇場名
- 電話番号
- 公開日
- 大阪府
- シネ・ヌーヴォ
- 06-6582-1416
- 1/7(土)〜1/27(金)【上映終了】
- 京都府
- 出町座
- 075-203-9862
- 7/21(金)から
- 京都府舞鶴
- シネ・グルージャ
- 0773-60-5566
- 2/21(水)~3/10(日)
- 兵庫県
- 元町映画館
- 078-366-2636
- 4/15(土)-4/21(金) 12:10〜【上映終了】
- 兵庫県豊岡市
- 豊岡劇場
- 0796-34-6256
- 7/21(金)〜7/25(火)】
中部
- 地域
- 劇場名
- 電話番号
- 公開日
- 愛知県
- 名古屋シネマテーク
- 052-733-3959
- 12/24(土)〜1/6(金)【上映終了】
九州
- 地域
- 劇場名
- 電話番号
- 公開日
- 福岡県
- キノシネマ天神
- 092-406-7805
- 12/30(金)~1/12(木)【上映終了】
- 大分県
- 別府ブルーバード劇場
- 0977-21-1192
- 3/10(金)より【上映終了】
写真集
写真集「浦安魚市場のこと」も同時製作
オンラインで絶賛発売中
60年以上もの間、多くの人々に親しまれてきた浦安魚市場が2019年3月末で閉場となりました。東京湾の新鮮な魚介類が豊富で、業者への卸だけではなく一般の方への販売も行い、「市民の台所」として人々に愛されてきた魚市場。年末は大売り出しで賑わい、浦安元町の人々に限らず、多くの人々が訪れ、浦安の風物詩となっていました。その歩みは、浦安の“暮らしの記録そのもの”です。
しかし、これまで浦安魚市場の写真資料は書籍化されておらず、個々人がバラバラに所有しているだけでした。このままでは、浦安魚市場の記録を残すことができません。「浦安に浦安魚市場があったんだよ」と伝えても、それを示す、まとまった写真の記録ßが存在していないのです。このような状況を受け、写真集製作を企画しました
本プロジェクトでは、写真やテキストを通して、”浦安の集団的な記憶”を共有することを目的としています。写真や映像、展示活動などを通して、漁師町だった浦安のアイデンティティーを考え共有していきます。
製作 発行_浦安魚市場写真集製作委員会
企画・構成_歌川達人
制作協力_大塚玲奈 東京大学 浦安プロジェクト_永門航、伊藤智洋、前山倫子、安藤理紗
カバーイラスト_岡田成生 デザイン協力_市川桂
PR_田中智子
写真提供_浦安魚市場協同組合、浦安市郷土博物館、野寺治孝、今井真、歌川達人
宣伝協力_地域情報総合サイト "浦安に住みたい!"、猫実珈琲店、鮮魚 "泉銀"、天ぷら"天悟"、味わい食堂 "ひねもすのたり"、須藤やや、浦安新聞
コメント
これまで淡々と繰り返されてきた毎日が、途絶えると知った途端に愛おしくなる。そういう経験を、私たちは何度も何度も繰り返してしまう。この儚さの中に見える力強さを、どうしたら忘れずにいられるのだろう。
武田砂鉄
見終えて「ああ、もう市場はないのだ」とたまらなく寂しかった。行っておきたかったと悔やまれてならなかった。見納めだ、と目頭をおさえた「泉銀」のおかあさんの声に胸を打たれる。森田釣竿さんはじめ、地元有志の方々の熱い思いが心に残る。愛惜という尊くうつくしい気持ちに満ちあふれた98分だった。
白央篤司
これを観たら、きっと誰もが浦安魚市場に行きたくなる。でも、それはもう叶わない。魚屋さんは魚を売っているだけじゃない。私たちは物だけを買っているわけじゃない。人から人へ、物や思い、いたわりや笑顔が行き交う場所。ある魚屋さんの心意気と涙に滲んだ言葉をたくさんの人と共有したい。
纐纈あや
浦安魚市場はたまに鰻などを買いに行っていました。本作の人情味あふれる場面を見てもっと行っとけば良かったと思いました。今度移転して続けてる泉銀さんや他のお店屋さんに行ってみます!
浜岡賢次
森田釣竿のチャーミングな個性とカリスマ性に引っ張られるうち、いつしか涙。これは日本の水産業の危機的側面や、固有の魚食文化、グローバリズムとローカリズムといった主題を抉りつつ、何より「場」の大切さについて考えさせられる一本である。
森直人
いつもと同じように始まり、いつもとは違う終わりを迎える、最後の日。それぞれの目に込み上げた涙や送られる拍手を、誇張せず、省略もせずに見せてくれた。この一日の長さをどう見せるかに、作り手の思いを受け取る。最後だけが特別なわけじゃない。だからこそ最後を丁寧に描く大切さを教わった。それが終わらせないための記録になると。
小森はるか
無くなってから気づく大切さ。大切なものを守るためにやらなければならないこと、やるべきことはその時にならないとわからないものです。日本の魚食需要が回復しつつある今だからこそ、できることはまだまだたくさんあると改めて考えさせられました。
栗原友
失ったものを理解しようとする態度には意味があると思っている。そのために、この映画は必須だ。映画というタイムマシンに乗って、浦安魚市場の時空間に身を置き、そこから、今とは異なるもう一つの「今」に至る路をどうやったら歩けるのか、考えることができる。今とは異なるもう一つの「今」とは、浦安魚市場をなかったことにはしない「今」だ。失ったものがあることを知っている「今」は、今とは違う。当事者である皆さんが「今」を生きているように、私たちも「今」を生きることができるかもしれない。
窪田亜矢
浦安生まれでも、浦安に住んだこともありません。なのに、こんなにも寂しい気持ちになるのは、どれだけ願っても戻らぬ日々だから。一つ屋根の下、大家族の暮らしが、たくさんの方の記憶の中で生き続けますように。
浦上宥海
掛け声が飛び交い、身体が波打ち、魚が飛び跳ね、リズミカルに包丁が動き、金銭が飛び交い、笑い声が起きる。魚市場にはエネルギーがドクンドクン脈打っている。このエネルギーが途絶えたら人は衰退するしかないのではないか? シャッターが降りる前に、魚を食え!
ダースレイダー
様々なことがめまぐるしく移り変わり、予想だにしなかったことが当たり前のように起こってしまう世の中で、私たちは変化に対応し続ける必要がある。市場を失ったこともその1つなのかもしれない。しかし、そんな中で、魚、人、文化、経済をめぐって私たちはどうあるべきか、考え続けることが大事だとこの作品は優しく気づかせてくれる。ただ常に堅苦しくあり続ける必要もない。魚を食べるという行為は豊かで楽しいものだから。この続きは美味しい魚を食べながら考えよう。
中原尚知
この映画は、浦安魚市場の閉場というばかりか日本の鮮魚店の激減という食文化の変容について考え、浦安という土地だけでなく日本社会の環境変化を思い巡らすことへと膨らんでいく。個人と生活環境、それを取り囲む社会のあり方を、観客の視線に巧みに結びつけて問いかける魅力的な世界である。
村山匡一郎
映画の場面場面にあらわれる人々の笑顔、涙、そして魚を介しての人間同士のやりとり…。そこここに監督が紡ぎ出してくれた人々の生活リズムと活気が満ちあふれ、気づけば視聴者も一緒に笑顔となる。過去から現在へと連綿と続いてきた生活の中で、どれほど多くの生きる力の発露の瞬間があったことか、私たちはその事実に気づいているだろうか。日本の近代化のプロセスでは、おそらく人生や社会の大転換の一瞬一瞬が、無数に存在していたに違いない。このドキュメンタリーを通して私はその存在の重さに、思いを馳せることができた。
じんのあい
現代の日本社会では,小さな営みは大きな営みに対して弱い。大きな営みである企業は「利益」を生み出すためにある。他方,小さな営みは金銭的な利益だけには還元できないもののために存在し、個人事業は自らとその家族の生計を立てるという「暮らし」に根付いている。本作品は現代を生きる私たちの働くことや暮らすことの根本的な問題に気づかせてくれるだろう。
仲 修平
浦安の一時代でしたね、感動しましたよ。浦安魚市場は家よりも家だった、この一言がすべてです。泣けてきました。
西潟正人